個人レッスンでやりたいこと

「卓球は技術では無い」とは私の卓球の先生である山中教子さんが常々指導していることですが、技術の土台となる身体・運動、思考・意識のレベルで技術の器が決まります。

卓球に限らず運動の本質は形(フォーム)ではなく、エネルギーの流れです。エネルギーの流れに身体が追随していくのであって、結果的な現象であるフォームをなぞっても運動を再現できません。エネルギーは筋力を使って自ら作り出すものではなく、地面反力などを利用して外部から獲得するものです。エネルギーは身体を通して、ボールを飛ばすためには、再び外部へと解放していきます。
身体にエネルギーを流せるために必要な二つの要素、体軸と体幹(の張力)を体得することで、力みが無く、それでいてパワーとスピードを兼ね備えた運動が可能になります。体軸、張力といっても実感が無いと思いますが、レッスンでは実際に体感してもらいながら進めていきます。特に初回レッスンではこの2要素を重点的に体感して理解します。

そして、その応用になりますが、卓球で必要不可欠なスイング運動の習得を目指します。卓球の場合、道具(ラケット、ボール)が軽く片手でラケットを持つため、スイングせずともボールは入れられますが、それだけでは早い段階で限界に達するでしょう。

また、ボールタッチの練習を地道におこないます。
ボールタッチは卓球の最も基礎的なスキルであり、様々な技術もここから派生させて作っているのです。したがって、(一般的に基礎と考えられているフォアハンド、バックハンドストロークではなく)、ボールタッチという打球の原点からはじめるのが本来は自然な入り方なのです。

さらに、ボールタッチについて解説します。
打球してボールを飛ばすことを以下のように理解していないでしょうか。

打球モデル①はボールのエネルギーAに対してラケット(自分)エネルギーBを衝突させて、B>Aとなったときにボールを飛ばせるとする考え方です。エネルギーを上書きして、返球するボールはBのエネルギーとして返します。

打球モデル②は、相手ボールのエネルギーAを一度受け止めた上で、そのまま返球ボールのエネルギーとする考え方です。相手ボールのエネルギーAと返球ボールのエネルギーAは同じものです。しかし、打球時にそのまま反転させて返すだけでなく、自分のエネルギーBも上乗せして返してあげます。Bはボールをコントロールするのに必要なエネルギーです。
ラバーの性能を評価する言葉で「球持ちが良い/悪い」と言うことがあります。また、中国卓球由来の言葉で「(ボールを)掴む」と言うことがあります。こういった打球感覚というのは、モデル②の考え方から来ているように思えます。ラバーという道具は、モデル②的な打球を補助してくれるものです。したがって、このようなボールタッチができないと、本当の意味でラバーを使えているとは言えないのです。

また、モデル①の問題点として、
例えば下回転のボールを打つと「持ち上がらない」場合、プレイヤーは自分エネルギーBが足りないからだと考えます。(実際はラケットを持てる筋力があればだれでも打てるのに。)
したがって、「もっと振りを早くしなければ」そのためには「筋力をつけなければ打てない」と考えてしまいます。より力む方向にいき、運動の本質から遠ざかってしまいます。これを純粋に技術的な観点から修正することは不可能で、技術以前の思考・意識から始めて、運動を変えてもらう必要があるのです。

以上、パーソナルレッスンでは基本的なことではあるが、技術習得の基礎ないしは前提となることを練習します。
結果として、かけた時間と比例して、自力で技術を向上させることができるようになります。
また、コーチのアドバイスを受けても有効に利用できるようになるでしょう。

                                           代表 小林賢太

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